富士山、立山とともに日本三名山の一つとして、古くから信仰の対象にもされてきた白山、標高2702m。その西麓に2025年12月、新たなレストラン・オーベルジュが誕生しました。西山昭二シェフとマダムの麻衣子さんの「エンヌ」です。

それは、白山を源流とし、日本海に注ぐ手取川流域72kmの自然と人が紡ぎ出す、美食と癒しの空間です。
冬の間、深い雪に覆われる白山は、雪解けとともに山菜が息づき、清冽な水は渓流となって様々な川魚を育んでいます。地中に浸透した水は、麓の里山で米や蕎麦に滋味をもたらすのです。
そこには山岳信仰に基づく祭礼や民俗行事と、厳しい自然の中で生まれた食文化がありました。

自然の恵みと伝統文化に魅せられた西山シェフは、1972年、愛知県生まれ。フランス料理を学び、洞爺湖サミット(2008年)の会場にもなったレストランの料理長を経て、2015年に金沢市で「レストラン エンヌ」を開業。「ミシュランガイド北陸2021特別版」で1つ星を獲得した名シェフです。マダムの麻衣子さんは、富山県の前衛的地方料理「レヴォ」でワインやサービスの技術を磨いてきました。

白山市と近郊には、山麓の自然を生かした産物作りに取り組んでいるたくさんの生産者がいました。西山シェフの料理に、彩りとスパイスや香りを添えるマイクロリーフ専門農園の青年達。また、耕作放棄地を活用、サフォーク種の羊を放牧し、野草を食べさせて健康的に育てようという山立会「やまだち牧場」の人たちもレストランを支えるアルチザンです。西山シェフは、ジビエとともに、柔らかな赤身が蕩けるサフォーク種の仔羊肉をレストランのメイン料理の一つに据えています。
生産者と料理人が交流しながら研鑽を重ね、里山に新たな息吹をもたらす、ローカルガストロノミーの理想型が、ここに生まれました。

レストランは、カウンター席、テーブル、個室が設けられ、木の温もりが周囲の環境との一体感を醸し出しています。

春のメニューから、その一部をご紹介しましょう。
アミューズのあとは、イワナ・仔羊・真フグの白子・ツキノワグマ・猪・ホタルイカ。白山から日本海へ到る手取川流域の産物が、熟練の西山シェフによって、繊細でありながら野性味溢れる「山麓ガストロノミー」に仕上がっています。
火入れには「薪火」が多く用いられていますので、料理からも、白山の森の精気を感じとることができるでしょう。

レストランと同じ敷地内には、意匠の異なる3つのコテージが用意されています。食後は、大自然の中、ゆったりと流れる時間に浸ってみてはいかがでしょう。

美食を堪能し、外に出ると、白峰の里には満天の星が輝いていました。

店名 ENNU エンヌ
住所 〒920-2501 石川県白山市白峰ツ110-1
電話 076-256-3689
URL https://ennu.jp
アクセス JR勝山駅より車で約30分

撮影/高野裕輔
文章/宮川俊二