「日本一美しい富士山が見える」山梨県忍野村

毎年、富士山山頂付近の雪が解け始める頃、7合目から8合目の山肌に鳥のような雪形が現れます。昔から土地の人々は、これを「農鳥」と呼び、農作業の目安にしてきました。

この「農鳥」にあやかり、富士山の北麓でとれる食材を中心に調理する「北麓ガストロノミー」を謳う宿泊施設を備えたレストラン「ノートリ」が2024年8月にオープンしました。

兄弟が創り出す美食と寛ぎの空間

オーナーは、富士吉田市出身のシェフ・堀内浩平さんと兄でソムリエの堀内茂一郎さん。
浩平さんは、都内で10年間修業し、渡仏。名店「ラ・グルヌイエール」で研鑚を重ね、帰国後、国内最大級の料理コンペティション「RED U-35 2021」でグランプリに輝いた料理界期待のシェフです。
兄の茂一郎さんは、都内のレストランや北海道洞爺湖の「ミシェルブラス トーヤジャポン」でソムリエとして腕を磨き、ニュージーランドに渡って現地のレストランに勤め、その間、サービスやワインに関する様々な賞を獲得したプロフェッショナルです。

将来は地元に帰り、これまで培ってきた技術を生かし、生まれ育った富士北麓の食材で、新しい料理とサービス空間を創り出したい…そんな二人の夢を形にしたのが、このレストラン・オーベルジュ「ノートリ」です。
厨房を囲むように配されたL字型のカウンター。ガラス越し、森の緑を眺めながら、野趣の中に、フランス料理の洗練が加わったコース料理がいただけます。
林の中ではシェフが薪を使った火入れをしています。周囲への気兼ねなく、豪快な薪火で、繊細な火入れがなされます。

ソムリエの茂一郎さんは、ワインのサービスはもちろんのこと、北麓の自然を取り込んだ新しいノンアルコールペアリングの開発に努めています。

堀内さん兄弟は、この自然の中でゆったり時間を過ごしてもらいたいと、1日1組だけ泊まれる宿泊施設を作りました。森に向かって開かれた窓。天然素材を活かした備品も揃え、快適な時間を過すことができます。

フランス料理と富士山麓の食材との融合

これは、ある日のコース料理です。(その一部をご覧ください)

地元出身の堀内さん兄弟は、実家でお父様が栽培されるお米をはじめ、地域の生産者との強い繋がりから新鮮な食材を手に入れ、調理することができます。

富士吉田市でハーブ農園「HERB STAND」を運営する平野優太さんも、そんな生産者の一人です。平野さんは、富士北麓の自然に惹かれて移住した新規就農者。畑のそばにいても香りが立つような上質なハーブを生産し、今では、都内の有名レストランにも出荷される優秀な生産者で、「北麓ガストロノミー」の力強いパートナーの一人です。

富士山の北麓を料理するレストラン・オーベルジュ

堀内さん兄弟にとって原点ともいうべき料理が「やさいめし」です。
お母様が作ってくださる「やさいめし」は、フランス修業の浩平さんも、ニュージーランドで活躍されていた茂一郎さんも、帰国して、これをいただくと、「ああ、家に帰ってきたのだ」という実感が湧いてきたとおっしゃいます。
浩平シェフは、この家庭の味を、ご自身のフィルターを通して再構成し、締めのご飯にしています。
土鍋で炊いたご飯の上に数種類の野菜を軽く炒め、椎茸とキノコの戻し汁と自家製の椎茸醤やトマト醤と黒糖で味付けしてのせます。他にも様々な調理法による野菜やキノコを20種類くらい使った混ぜご飯です

堀内家の味に、フランス料理のニュアンスも忍ばせた、何杯でもお代わりしたくなる「やさいめし」。
皆様もどうぞ、お召し上がりください。

富士山の北麓を料理するレストラン・オーベルジュ

住所 〒401-0511 山梨県南都留郡忍野村忍草3192-8
店名 nôtori
URL  https://notori-fuji.com/
アクセス 東富士五湖道路忍野村スマートICより車で5分。 駐車場 4台

文/宮川俊二
写真/奥谷仁