「沖縄を“美食の島”にしたい」。これが、うるま市出身の料理人・潮平里志さんが自身の店「Totto(トット)」をオープンして以来、熱い思いで掲げる“大義”です。「イタリアから戻って『ARDOR(アルドール)』という店に関わり、改めて沖縄の本当の豊かさに気付かされたのだと思います」。
野菜、果物、ハーブ、スパイス、沖縄には温暖な気候が育むユニークな植生があります。そして、海藻や魚介類など滋味あふれる海の幸、古くから根付いている豚肉や発酵食材の知恵など。20代でイタリアに渡った潮平シェフが、沖縄の自然の恵みを新鮮に受けとめることができたのは、地元の食文化を大切にするイタリアの人たちとの4年半があったからかもしれません。
沖縄食材の可能性を、イタリアで磨いた料理技術や独自の緻密なアプローチで提案するレストラン「Totto」の潮平シェフに、その料理世界を支える生産者を紹介していただきましょう。
うるま市 浜比嘉島(勝連半島)/ 電灯素潜り漁 漁師・城間大輔さん
城間さんは、東京で広告代理店勤務などを経て地元に戻り、祖父の代から続く家業を継ぎました。今では県内の名だたる料理店に卸す漁の名手として一目置かれる存在です。マクブやガーラ、チヌ(クロダイ)やアカジンミーバイ(スジアラ)など、沖縄高級三大魚を含む豊富な魚類を、極上の状態で料理人に届け、沖縄の食のレベル向上に貢献する重要な生産者の一人です。
名護市/ 畑人 農業生産法人株式会社 クックソニア代表取締役 芳野幸雄さん
2021年ユネスコ世界自然遺産に登録された沖縄本島北部の国頭郡を拠点に、新規就農者を長年束ねてきたハルサー(畑人)芳野幸雄さん。潮平シェフが開業準備中に足繁く通い、土まみれになって畑仕事を手伝わせてもらった「野菜の師匠」です。この島の野菜の特性や魅力、可能性を畑の中で学んだ特別な時間だったと潮平シェフは言います。
うるま市 /「喜納農場」3代目養豚家 喜納忍さん
沖縄を代表するブランド豚「紅豚」や「紅あぐー」を生んだレジェンド養豚家を父に持つ喜納忍さん。10代の頃から家業を手伝い、父・憲政(のりまさ)さんが病気療養のため現役を退くと、後を継ぎ、現在は喜納農場の3代目として、新しいあぐー豚「喜納農場のあぐー」の飼育に心血を注いでいます。
2020年に起きた豚熱で経験した言葉に尽くし難い悲しみや悔しさをバネにゼロからの再スターを切り、養豚家として先進的な取り組みを重ねています。
「通常、豚の飼育日数は180日ほどですが、『喜納農場のあぐー』は、体が小さく成長が緩やかなため240〜270日かけて育てています。乳酸菌入りの水を毎日たっぷり飲むことで腸がきれいなため、特有の臭みがなく、脂身はとろけるように甘い。赤身には旨みと深いコクがあると好評いただいています」と喜納忍さん。
沖縄の優れた食材を活かした潮平シェフの料理を4品ご覧ください。
「Totto」
住所 〒901-2226 沖縄県宜野湾市嘉数4丁目6-7
電話 098-800-2592
Instagram totto_okinawa
アクセス 那覇空港より(国道332号・58号経由)車で25分程度
文/ 松浦 明(edible.)
撮影/ G-KEN