急峻な山々に囲まれ、中央を勝浦川が流れる上勝町は、人口約1300人。四国で一番人口の少ない町です。しかし、この町には、面積の88.3%が森林という豊かな自然を生かした、大きな「宝」があります。

全国から注目を集める「葉っぱビジネス」は、今や町の基幹産業です。
日本料理の盛付けに欠かせない「つまもの」。料理店からの多様な注文を、高齢者や女性がICT(情報通信技術)を使いこなし、タブレットを片手に山へ入り、生き生きと暮らしていらっしゃる姿が話題になりました。
現在も「株式会社いろどり」として栽培、採取、商品開発に努め、日本料理の美しさを支えています。この日は少し色づきはじめた紅葉の注文を受けて、収穫に出かけました。

もう一つ、全国に知られているのが「ゼロ・ウェイスト宣言」です。上勝町の皆さんはゴミの削減に努め、リサイクル率80%以上を達成しました。2020年に生まれ変わった「ゼロ・ウェイストセンター」は、上空から見ると、「?」マーク。地球環境の悪化に「WHY」という疑問符を投げかけています。
ここには、宿泊体験棟としてホテルも設けられました。

山深い上勝町は、自然の懐の中で、四季折々の表情を見せてくれます。
満天の星、夏には川面を舞うホタル、収穫の秋の造形美、暖かい四国でも山間の冬は雪化粧をします。

この町に2024年、新しく「ロカンダ」が登場しました。
上勝町の自然に惹かれ、徳島市から移住してイタリア料理店「ペルトナーレ」を開いていた表原平シェフが、この土地の時間を丸ごと味わってもらいたいと、民家をリノベーション。快適な宿泊施設も整えた「ロカンダ ペルトナーレ」として新たなスタートを切ったのです。
イタリアでは、旅人が食事をしたり、宿泊することによって疲れを癒やす場所を「ロカンダ」と呼んでいます。

山間の木造家屋は、懐かしい故郷に帰ってきたみたいだと、おっしゃる方もあるそうです。

表原シェフは、フランス料理の修業からスタートし、地産地消のイタリア料理を提唱する奥田政行シェフの「アル・ケッチァーノ」に入社。奥田シェフから調理技術と、食を通じた地方創生の精神を学びました。上勝町は、土地の風土(テロワール)を料理として表現したいという表原さんにとって、願ってもない場所だったようです。

調理も薪の火を駆使し、ダイナミックに仕上げていきます。ウナギは、もちろん地元の勝浦川や河口付近で獲れたもの。煙と香りが食欲をそそります。

野菜や果物は地元で購入しますが、ロカンダの前で自ら栽培もしています。畑からカウンターへ。この瑞々しさは都会のレストランでは味わえないものです。

ロカンダでは、スタッフの田中苑子さんとシェフのお母様、表原明子さんが、
笑顔で迎えてくださいます。
そんな、癒やしの「ロカンダ」へ、皆様もどうぞ。

アクセス: 徳島空港から車で1時間15分程度。
ペルトナーレ
住所: 徳島県勝浦郡上勝町福原古川71番地
URL: https://pertornare.jp

文/宮川俊二
写真/ヤマザキ ノブアキ