「さあ、日本の旅にでかけましょう!」TREASURES OF JAPANの一環として開いている「旅サロン」。
今回は、「ワインの町 余市」を世界に発信されている北海道余市町の齊藤啓輔町長にお越しいただきました。
齊藤氏は1981年、北海道紋別市生まれ。早稲田大学を卒業後、外務省に。在ロシア日本国大使館やウズベキスタン、ウラジオストクで外交官として活躍。本省に帰任後、内閣総理大臣官邸国際広報室から地方創生人材支援制度に応募して北海道天塩町の副町長に就任。2018年、余市町長選挙に立候補、当選し、現在2期目でいらっしゃいます。
今回の「旅サロン」の参加者は、主にワインや旅行関係の皆様。まず、齊藤町長のワインに関する造詣の深さ、明確な戦略、それを言葉にされた時の強さ、実行力に圧倒されたようです。
余市町は、札幌市から鉄道でも、車でもほぼ1時間。人口約1万7000人の自然豊かな町です。ニッカウヰスキー創業の地であり、果物、海産物の産地としても有名です。しかし、この町もご多分に漏れず人口の減少が激しく、何か新しい地域の起爆剤が必要でした。
そこで、齊藤氏が目をつけたのがワインです。
余市には、長野県小布施町の名門ワイナリー出身の曽我貴彦氏が地域で2つ目のワイナリー、ドメーヌ・タカヒコを興し、すでに高い評価を得ていました。
齊藤町長は、高付加価値が期待できるピノノワールとシャルドネという世界品種の栽培を奨励。また、曽我氏も多くの研修生を受け入れ、若い栽培・醸造家が町に移住しました。今では、2つしかなかったワイナリーが20近くに増え、人口減少のスピードを抑える役割も果たしています。
齊藤氏のお話で興味深かったのがalliance(アライアンス)の重要性ということです。
ドメーヌ・タカヒコのワインは、世界一のレストランに何度も選ばれたスウェーデンの「noma」に採用されています。それは、町長が自ら「noma」のヘッド・ソムリエに、さりげなく売り込みをかけられた成果でした。
そこには、余市のワインが、世界のどの料理に合うかを分析し、北欧の、世界一のレストランをターゲットにし、世界中の美食家が集まる最高の舞台で、余市の存在をアピールしようという緻密な戦略がありました。
2022年、グラスメーカー「リーデル・ジャパン」と包括連携協定を締結。
2025年の2月には、フランス・ブルゴーニュのジュヴレ・シャンベルタン村と連携協定を結びました。ブルゴーニュの至宝ともいえる銘醸地と、世界的には、まだほとんど無名といってもいい余市町がどうして結びついたのか。これも、齊藤町長が名門ドメーヌの当主との出会いの中で進められたのだということです。
また、5月30日には「X JAPAN」のYOSHIKIさんが余市町でワイン造りを始めることを発表。さらに、幅広い層への広がりが期待されます。
このように、様々な分野の「最高」と連携することは、その情報を共有し、自らを高めることにも繋がります。
特筆すべきは、齊藤氏がこれらの交渉を、コンサルタントなどを介さずに進められたことです。
そこには、「専門の会社に丸投げしていては、真の地方創生にならない」という強い信念があります。
こうして、余市町は「ふるさと納税」でも、2017年に6000万円だったものが、2024年には15億円余りに達し、住民の皆さんの暮らしに役立てられています。
「何故、ワインなのか」「地方創生にどう結びつくのか」、地元や議会の皆さんへの説明にはご苦労もあったと思います。しかし、「ワインで一点突破」、齊藤氏の挑戦は次々、新しい地平を切り拓いています。
さあ、皆さんで「ワインの町」余市へ出かけましょう!
文/宮川俊二
撮影/奥谷仁
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