茨城は、関東圏にあるため、東京の皆さんには、わざわざ出かけることもない、意外に知られていない、近くて遠い県です。
ここには、太平洋の海があり、日本で2番目に大きな湖・霞ヶ浦、鮎の名所・久慈川、そして広大な農地…と、まさに食材の宝庫なのです。
その新鮮な食材を生かすためには、近年、スペインで注目され、全世界に広がっているアサドールという、炭や薪を使った火入れが最適かも知れません。
スペインを経験した藤シェフが、火を存分に使える、自身のレストランを作りたいと考えられたのは当然の流れでした。
気候変動で、茨城の漁港にもたくさん揚がるようになった伊勢海老や常陸牛が、シェフの手によって見事に火入れされていきます。
こうした料理を生み出すためには、たくさんの生産者の力添えが必要です。ここでは、3人の方にご登場いただきましょう。
盛付けた料理が、さらに味わいを増す器作りをされているのが、木漆工芸作家の辻徹さんです。北海道出身の辻さんは、東京芸術大学大学院を卒業後、大子町に移り住み、漆の生産から精製、木の器の製作、そして漆塗りまで一人で仕上げる大子漆の第一人者です。
「一貫したものづくり、それが私たちの製作の基本です。そうすることで、作品への思いを貫くことができるのです」
藤シェフも、「常陸の食材で料理し、盛付けることにより、自然に漆の器が馴染み、この地方の新しい可能性を感じます」と、おっしゃいます。
もう一人、このレストランになくてはならない存在、それは、もちろんマダムの由香さんです。
皆さんを飛びきりの笑顔でお迎えし、料理とワインのサービスをされる由香さん。シェフとお二人が醸し出す温かい雰囲気は、料理の味を、さらに引き立てているようです。
「常陸の国が、バスクのような美食の目的地になるように」
藤良樹・由香夫妻の挑戦は、始まったばかりです。
住所 茨城県常陸大宮市石沢字上ノ坪1107-1
店名 YOSHIKI FUJI
電話 0295-53-0330
アクセス 常磐自動車道 那珂ICから車で30分程度。
文/宮川俊二
写真/小松勇二、奥谷仁
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