松尾さんは、西多摩出身で、帝国ホテルに就職し、21年間務め、「レセゾン」での最後の4年は名シェフ、ティエリー・ヴォアザン氏のスーシェフを務めました。
ホテル在職中から、奥多摩で畑を借り、自ら野菜栽培をしていた松尾さんが、野菜作りの師匠から紹介されたのが、明治8年頃に建てられたという小机家住宅。現在、都指定有形文化財に指定されている建物です。
一目で惹かれた松尾さんは、ここをレストランとして活用できないかと、11代目当主・小机篤さんに交渉、快諾を得ました。
小机さんは、現役の「木樵」。林業に勤しみながら日本全国を釣り歩く趣味人でもあります。
明治の頃、五日市は林業が盛んで、名前の由来となった毎月5日の木材市で栄えていました。
「昔、渋谷が村だった頃、五日市は町だった」というのが、この町の人々の誇りです。
松尾さんは、海の食材を求めて小笠原諸島を訪れ、奥多摩の自然が育んだ山の幸と合わせます。
松尾さんに,レストランを支える食材やその生産者を、ご紹介いただきました。
まずは,シェフ自身が「清水農園」清水孝之さんから借り受け、野菜作りをしている「クロ・ド・ラルブル」。その日に使う野菜を収穫します。
ここでは、店から出る生ゴミをコンポストで畑の肥料にして利用しています。
ぶらり歩いていると、愛犬と散歩中の中村義則さんに出会いました。実は、この人、鮎釣りの名人なのです。季節には,中村さんが釣った鮎が「ラルブル」の皿にのります。
「コンパン」の伊藤源喜・華奈夫妻。美味しいブリオッシュ、カンパーニュ、ノアレザンを作られます。この日はお休みで、ゆっくり寛いでいらっしゃいました。
松尾シェフは、自然と人に恵まれた奥多摩の地で、そのすべてを受けとめ、料理に投入。都心では難しい大胆な火や煙を使い、飛びきり美味しい料理を作り出しています。
アクセス: 圏央道あきる野ICから車で12分程度。
ラルブル
住所: 東京都あきる野市三内490
URL: https://www.larbretokyo.com
文/ 宮川俊二
撮影/ 奥谷仁
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