駿河湾は、水深が2500mにも及び、起伏に富んだ地形に多様な魚介が生息する海洋資源の宝庫です。その駿河湾の恵みを超一流店に納め、高く評価されたところから、前田さんの物語は始まりました。
「東京で認められた魚を静岡で食べられれば、地元にもっと人を呼ぶことができる。それが地方創生のモデルケースになるはずだ」
そう考えた前田さんは、2007年、静岡市内に「てんぷら成生」を開業していた志村剛生さんと共に、魚の仕立てと調理方法の試行錯誤を重ねました。
その「成生」が、今や海外からのゲストも含め、静岡に人を呼び込む予約困難店になっていることは、ご承知の通りです。
日本でもまだまだ普及していない、魚の鮮度を保つための技術「神経締め」も、ここでは皆さん、普通のこととして施されています。
「『神経締め』は、当たり前。今は、『冷やし』と『游がせ(およがせ)』です」
と、おっしゃる前田さん。
市場の一隅に幾つも置かれた水槽。これが、「游がせ」の現場のようです。
「料理は仕入れから」と言われますが、前田さんは、始まりは「海の中から」と考え、長い月日をかけて、魚を捕る漁師さんたちに説明を繰り返しました。
まず、魚にストレスを与えない捕り方をすること。生きたまま港まで運ぶこと。
こうした手間のかかる作業を引き受けてくれる漁業者を見つけ、実際に料理したものを食べてもらい、賛同する人を増やしていったのです。
前田さんは、自分が手当したものが、料理としてどう仕上がったのか確認するため、「夜な夜な会」と称し、営業後の店を訪ねて、料理人・シェフと反省会を開いています。時には漁業者にも加わってもらい、新しい漁法と従来の捕り方を比べ、味の違いを実際に食べながら感じ取ってもらうのだそうです。
「海の状態、魚の様子も日々変わります。自分の弱点を見つけ、自分の中にデータを積み重ね、翌日入ってくる魚に対応しなければなりません。正解はわからないのです」
魚を捕ることから始まり、世界最高レベルの魚料理が出来上がる、その間に、魚屋・前田尚毅さんが立っているのです。
住所 〒425-0036 静岡県焼津市西小川4-15-7
店名 サスエ前田魚店
電話 054-626-0003
アクセス 東名高速道路焼津ICから車で10分程度
住所 〒425-0022 静岡県焼津市本町6-14-12
店名 茶懐石 温石
電話 054-626-2587
アクセス 東名高速道路焼津ICから車で15分程度
住所 〒425-0036 静岡県焼津市西小川4-8-9
店名 馳走 西健一
電話 054-625-8818
アクセス 東名高速道路焼津ICから車で10分程度
〒425-0027 静岡県焼津市栄町2-4-8
店名 なかむら
電話 054-639-6613
アクセス 東名高速道路焼津ICから車で10分程度
文/宮川俊二
撮影/大野仁志
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